総長・学部長メッセージ MESSAGE

総長

AIJI TANAKA 田中 愛治 早稲田大学 総長

1975年早稲田大学政治経済学部卒業。1985年The Ohio State University大学院政治学研究科博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東洋英和女学院大学助教授、青山学院大学教授、早稲田大学政治経済学術院教授等を経て2018年11月より現職。現在、日本私立大学連盟会長、日本私立大学団体連合会会長、全私学連合代表等を務める。

eスクールからグローバル・リーダーへ

早稲田大学人間科学部通信教育課程(eスクール)の創立20周年、おめでとうございます。早稲田大学の創立者である大隈重信は人生125歳説を唱えましたが、今や人生100年と言われる時代となりました。eスクールは、時代に先駆け、2003年の設立当初からオンラインによる通信教育のパイオニアとして、リカレント教育を牽引してきました。こうして20周年の節目を祝うことができることを大変うれしく思います。

早稲田大学は2032年に創立150周年を迎えますが、将来計画「Waseda Vision 150」では、「世界に貢献する高い志をもった学生の育成」、「世界の平和と人類の幸福に貢献する研究」という教育・研究におけるビジョンを掲げ、「世界で輝くWASEDA」を目指して教育・研究活動を推進し、グローバルに活躍できる人材を育成しています。

2020年に発生した新型コロナウイルス感染症拡大によるパンデミックを通して、世界中でオンライン教育の重要性が認識され、その効果も確認されましたが、早稲田大学の人間科学部における通信教育課程では、開設当初からeスクールとしてオンラインによる通信教育という形をとってきました。これはオンラインを中心に据えた通信教育課程としては、日本初の試みであり、先見性のある時代を先取りした試みでした。

eスクールでは、さまざまな環境のもとにいる学生に提供しており、コロナ禍ではその真価が改めて見直され、早稲田大学の他学部がオンライン教育に切り替える際にも、先例を提供して、大きな貢献をいたしました。

早稲田大学は現在、文理連携教育の重要性を強調しておりますが、人間科学部では、開設当初から人文社会科学と自然科学がその枠を越えて連携する教育を推進しており、答えのない問題に対する解決策を考え抜く「たくましい知性」を育むには最適の環境を提供しています。

また、eスクールでは、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が学んでいます。eスクールで学ぶことは、多様な価値観を持つ人々を理解し尊重する「しなやかな感性」を育むことにもつながります。

さらに、eスクールが創立以来積み重ねてきた伝統の一つとして、離れた場所で学ぶ学生同士が、他者の考えや意見を聞き自分の意見を述べることがあります。その伝統によって、互いの思考が共鳴する「ひびきあう理性」を高め合っているといえます。

グローバル・リーダーが育つための豊かな土壌であるeスクールを巣立った卒業生は、この20年間で2,000人を超え、様々な分野で活躍し社会に貢献しています。今後も、このeスクールで「たくましい知性」、「しなやかな感性」、「ひびきあう理性」を身につけ、時代の変化に柔軟に対応できる人材が育っていくことを期待しています。

学部長

HIROYUKI MISHIMA 三嶋 博之 早稲田大学 人間科学学術院長・人間科学部長

1992年早稲田大学人間科学部卒業。1997年早稲田大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学人間科学部助手、福井大学教育学部助教授等を経て、2007年より早稲田大学人間科学学術院准教授。2017年同教授。専門は生態心理学、実験心理学、認知科学。

未来へ ― 生涯学習の伝統を礎に、人間科学の知恵を携えて

早稲田大学人間科学部eスクールは、スクーリング等を除くすべての授業をオンラインで配信する、日本で初めての通信教育課程として、2003年4月に設立されました。設立以来多くの学生を迎え、ともに歩んできたeスクールが、このたび20周年を迎えたことをたいへんうれしく思います。

早稲田大学は、かつて1886年(明治19年)から1958年(昭和33年)まで『早稲田大学講義録』を刊行し、これによって大学外の多くの人々が学んだことはよく知られています。社会に開かれた人間科学部eスクールは、そのような早稲田の伝統を受け継ぎ発展させたものであると言えます。

eスクールがその学問分野として標榜する「人間科学」は、人間の複雑性と多様性に真摯に向き合いつつ尊重し、人間そのものと人間の社会や環境のダイナミクスを科学的に探究することを通じて、現代の諸問題に対する有効な解決策を示すことを目指しています。人間科学部eスクールは、設立当時よりもさらに変化の速度と不確実さが増した社会で生じている諸問題に対応する努力をこれからも続けたいと考えています。

これまでの20年間に人間科学部eスクールで学んだすべての皆さんが、これら早稲田大学と人間科学部の精神を継承し、人間科学の智恵を活用してご自身の夢をかなえると同時に、社会に貢献されることを願っております。