教員対談 TALK SESSION

2023年10月4日 教員対談【1】森川靖×平塚基志(後編)

「ヒトと陸上生態系」をめぐって森川先生と平塚先生に対談していただきました。

専門は森林環境科学。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。早稲田大学人間科学学術院准教授を経て、2023年4月より教授。

専門は生物学、環境生態学。東京大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。森林総合研究所 植物生態科長を経て1995年より早稲田大学人間科学学術院教授。早稲田大学名誉教授。

平塚

熱帯林を切り開いたアブラヤシ農園で作られたパーム油を、アイスクリーム、マーガリン、カップラーメン、ポテトチップスなどを通して、私たちは平均で1年間に4Kg口にしているとされています。 先進国の私たちが便利で質の高い暮らしを求めることが熱帯雨林を減少させている。先進国の暮らしと途上国の暮らしはトレードオフになっていることを示しています。

平塚

植物の特性を理解し食料生産のメカニズムを把握したうえで、日常生活で食料を選んだりしなくてはならないといえますが、これについて森川先生ご説明いただけますか。

森川

身近な場所に、持ってきた種を蒔いて収穫する、これが農業の始まりです。生産をあげるために肥料をやらなきゃいけない。土地が豊かになると雑草が生えるので除草しなきゃいけない。害虫も集団で発生しますから害虫駆除をしなきゃいけない。やがて肥料も化学肥料を使うようになる。大量生産になったとたんに殺虫剤、除草剤、化学肥料というこの3つは避けられなくなります。

平塚

食料生産について量で考えていこうということで、当時森川先生がお使いになっていたスライドを持ってまいりました。家畜から得る食料とその飼料を含む穀物をめぐる食料生産のプロセスについて、先生お願いいたします。

森川

ただでさえ、世界的に人口に対する穀物生産が追いついていない状況で、人間が食べればいい穀物を一回牛に与えて、肉に変えてそれを食べてということをやっている。ですから飢餓の原因は、人口増加もあるけど、食料生産の上限と肉食化です。量で考えたときに、私たちはどういう立場にあって何をすべきなのかを考えてほしいんですね。環境問題を量で考えましょうということの一つの表し方だというふうに思います。

平塚

食料生産を通じて量で捉えることの重要性や、生産効率のお話をいただきました。これが講義を通して基礎として身につけば、応用として日常生活や商品選択にもつながると思いましたし、社会にも活用できる内容だと改めて理解いたしました。ありがとうございます。 「ヒトと陸上生態系」の骨格になっている5つのポイントを紹介してきましたが、 最後に私から申し上げるとすれば、問題は非常に複雑になっていますし、複合的になっているんですけど、そうであるからこそ人間科学部の重要性を感じています。私は講義の中で総合格闘技と言っているんですけど、いろんな技を組み合わせて、使いわけてしっかりアプローチしていかないとこの複雑な問題には対応できないと思っています。今後も、講義ではそういったことを、新しい情報を取り入れつつ伝えたいと改めて思いました。

平塚

森川先生、最後になりますけど、「ヒトと陸上生態系」を通して伝えたかったこ となどを改めてお話いただければと思います。

森川

環境問題は、もうすでに地球が滅びるかどうかの段階を迎えている。学生には環境問題を基本からきちんと理解したうえで、産業部門、経済部門いろんな分野で活躍してほしいというのが常に私の言ってきたことです。ですから社会に出た方々が、こうしてeスクールに来て勉強されることは非常に素晴らしいことだと思っています。