教員対談 TALK SESSION

2024年3月11日 教員対談【2】池岡義孝×松木洋人(後編)

「家族社会学」をめぐって池岡先生と松木先生に対談していただきました。

池岡 義孝
専門は社会学、家族社会学。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。早稲田大学文学部助手、早稲田大学人間科学部専任講師、助教授を経て、2005年4月から人間科学学術院教授。早稲田大学名誉教授。

松木 洋人
専門は社会学、家族社会学。博士(社会学)。早稲田大学人間科学部助手、東京福祉大学短期大学部専任講師、⼤阪市⽴⼤学大学院生活科学研究科准教授を経て、2023年4月より早稲田大学人間科学学術院教授。

松木

高度経済成長期にいったん安定した家族の形態が崩れつつある現代社会において、社会の仕組みはこうした家族の変容についていけているのかというのが日本の社会、日本の家族が抱えている課題です。

松木

左の図は、日本、フランス、ドイツ、スウェーデンの人々に、自分の国が子どもを産み育てやすいかを聞いた、その回答の分布図です。 日本社会で暮らしている人にとって、日本は子どもを産み育てにくい国であることがわかります。専業主婦が子育てに専念するという前提で作られた社会の仕組みがいまだに維持されており、女性も働く現代社会では子育てと仕事の両立に苦労する人が多いことが、この要因のひとつと考えられます。

松木

右の表は、ひとり親世帯の貧困率の国際比較です。日本はOECD加盟国で最も貧困率が高くなっています。 近代家族の最盛期では、みんなが結婚して離婚も少なかったのですが、その後子どもがいる状態での離婚が増えました。日本と同じように20世紀後半に離婚率が上昇した社会のなかには、その変化に対応して、ひとり親でも子どもを育てやすい仕組みを作り上げた社会もあります。しかし日本はいまだに対応ができていないのです。

池岡

家族が多様化している社会にあっては、どのような家族を選んでもそのことだけで不利にならないようにしなくてはならないのにも関わらず、新しい家族のあり方に対応する施策や人々の価値観が追いついていないことが、日本の現代の家族問題を生んでいることを明確に示していますね。