教員対談 TALK SESSION

2024年3月11日 教員対談【2】池岡義孝×松木洋人(中編)

「家族社会学」をめぐって池岡先生と松木先生に対談していただきました。

池岡 義孝
専門は社会学、家族社会学。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。早稲田大学文学部助手、早稲田大学人間科学部専任講師、助教授を経て、2005年4月から人間科学学術院教授。早稲田大学名誉教授。

松木 洋人
専門は社会学、家族社会学。博士(社会学)。早稲田大学人間科学部助手、東京福祉大学短期大学部専任講師、⼤阪市⽴⼤学大学院生活科学研究科准教授を経て、2023年4月より早稲田大学人間科学学術院教授。

池岡

私の講義を引き継いで、松木先生は戦後の日本の家族変動をどのように説明しているのでしょうか。

松木

スライドの左の図は、落合恵美子先生の議論をふまえて、前近代社会、近代社会、現代社会の三段階において配偶者のいる女性の働き方がどう変わっていくのかを示しています。 まず、前近代社会ではほとんどの人が第一次産業で生活しており、女性の労働力率は高いです。 近代社会に移行し、人々が雇われて働くようになると、専業主婦が増えて女性の労働力率は低下します。この現象が日本社会で最も進んだ高度経済成長期(1950年代半ばから1970年代半ば)の家族のあり方を、落合先生は「家族の戦後体制」と呼んでいます。この時期が日本における近代家族の全盛期、戦後日本の家族の安定期にあたります。その後女性の脱主婦化が起こり労働力率は上昇します。 高度経済成長期の20年間にいったん安定した家族のあり方、またそれを背景にした社会のあり方が、その終わりとともにゆっくりと崩れてきている、そのような時代に我々は生きています。つまり我々は家族の変化の三段階目にいる。この認識が今の日本の家族を捉えるうえでの基本的な考え方です。

松木

1950年代半ばから1970年代半ばの20年間は合計特殊出生率が安定しており、1970年代後半から低下しはじめます。 近代家族の安定期は、結婚して子どもを2、3人もつことを多くの人が実践するようになった時期といえます。 このように出生率からも、前近代社会ではさまざまであった家族のあり方がいったん画一化し、ふたたび多様化していくことが読み取れます。子どもの生まれ方も三段階で捉えることができるのです。

松木

左の図「家族の姿の変化」を見ると、近代家族は核家族が典型的でしたが、1980年代以降減少し、それに対して一人暮らしが増えています。結婚して家族をつくる皆婚社会が当たり前ではなくなってきているのです。 次に右の図「年齢階級別労働力率」を見ると、男性の働き方は50年間変わっていないのに対して、女性の働き方が大きく変わったことがわかります。 1970年の女性の労働力率は20代後半と30代前半に下がります。これは女性に結婚・出産がおこりやすい時期です。その後だんだんと特定の年齢で労働力率が下がることはなくなります。夫だけが働き妻は家庭で家事育児に専念するという家族のあり方がメジャーではなくなり、結婚していても子育て中でも女性も働くという家族のあり方が、当たり前になってきたことを示しています。